令和3年公営企業会計決算特別委員会 本文 2021-10-13
【小木曽史人委員】
水道事業会計について、令和2年度愛知県公営企業会計決算審査意見書の8ページで、持続可能な事業経営という視点から、地震防災対策や老朽化施設の更新、水源施設の開発などにより、長期的に多額の費用が発生することへの懸念と対応が指摘されている。令和元年度も同じような記述となっているが、まず、水源施設の開発について質問する。
水源施設、いわゆる設楽ダム建設事業、木曽川水系連絡導水路事業、豊川用水二期事業、矢作川総合第二期事業の4事業について、事業費ベースの進捗率と、本年度中に何パーセント進む見込みなのか。
【水道計画課長】
設楽ダム建設事業については、総事業費2,400億円に対して昨年度末までの事業費が1,160億円で、事業費ベースでの進捗率が48.3パーセントとなっている。本年度は、付け替え道路工事などにより事業費が157億円、進捗率は6.6パーセントを見込んでいる。
木曽川水系連絡導水路事業については、総事業費890億円に対して昨年度末までの事業費が54億円で、事業費ベースでの進捗率が6.0パーセントとなっている。本年度は、環境調査などにより事業費が2億円、進捗率は0.3パーセントを見込んでいる。
豊川用水二期事業については、総事業費2,484億円に対して昨年度末までの事業費が2,023億円で、事業費ベースでの進捗率が81.4パーセントとなっている。本年度は、幹線水路の併設水路工事などにより事業費が66億円、進捗率は2.7パーセントを見込んでいる。
矢作川総合第二期事業については、総事業費636億円に対して昨年度末までの事業費が160億円で、事業費ベースでの進捗率が25.1パーセントとなっている。本年度は、明治用水の幹線水路及び頭首工の耐震化などにより事業費が48億円、進捗率は7.5パーセントを見込んでいる。
【小木曽史人委員】
木曽川水系連絡導水路事業は進捗率が6.0パーセントで、様々な課題があると思うが、本事業の企業庁の負担金は約124億円、すでに完成している徳山ダムの負担金は約172億円であり、合計約300億円を企業庁が負担していると理解するが、年間では幾ら拠出しているのか。また、この負担金はどこから拠出されているのか伺う。
【水道計画課長】
木曽川水系連絡導水路については、現在建設中で、工事費を毎年度直接負担しており、昨年度は約2,000万円を負担した。財源は、企業債で約1,000万円、一般会計からの出資で約1,000万円をそれぞれ充当している。
一方、徳山ダムについては、平成20年3月に完成しており、建設に係る負担額172億円に利息を含めた総額を平成20年度から独立行政法人水資源機構に対し割賦で支払っており、昨年度は約20億円を負担した。財源は、料金収入等で約18億円、一般会計からの補助、出資で約2億円をそれぞれ充当している。
【小木曽史人委員】
水道事業の経費は必要経費であり、県民の税金の中からある程度賄うことも納得すべき経費であると理解しているが、県民に利益が還元されないままの状態で長年支出されている徳山ダムの経費など、県民の理解を得るのがなかなか難しい状況であり、これがどこまで続くのかと少し不安感がある。
現在、事業主体である独立行政法人水資源機構と国によりダムの検証が行われていると聞いている。県だけの責任ではないことは承知しているが、多額の事業費を投入した結果をしっかりと県民が享受すべきであるという強い意識を持って、徳山ダムの水利用に必要となる木曽川水系連絡導水路事業の進捗をしっかりと行うように、企業庁から独立行政法人水資源機構に対して積極的に働きかけるよう要望する。
次に、用地造成事業について、令和2年度愛知県公営企業会計決算審査意見書の17ページに、臨海地区に約86万5,000平方メートルの未処分宅地があり、分譲開始後10年以上が経過している用地があるという指摘がある。この臨海用地は、将来的な発生が予測されている南海トラフ地震による自然災害のリスクや、企業側の立場でいうとBCPの観点から、今の時期は、敬遠されがちだということは容易に想像できる。
そこで、臨海用地について、昨年度、新規売却できた用地、また、貸付契約を締結した用地の実績について伺う。
【企業誘致課長】
昨年度の臨海用地における新たな契約状況は、売却が6件、7万6,278.52平方メートル、売却金額21億381万4,025円で、貸付けが1件、7,267.39平方メートル、年間賃料621万3,618円となっている。
現在、複数の具体的な引き合いもあるため、今後とも積極的な企業誘致活動に取り組み、契約締結に向けて努力していく。
【小木曽史人委員】
昨年度はコロナ禍ということで、今後の事業見通しが非常に不透明な中でも、ある程度実績があったということだが、用地取得は企業にとって多額の投資を伴う一大プロジェクトであるため、時代を先読みした動きがあると思う。その意味では、残っている約87万平方メートルの未処分宅地を、魅力的なインセンティブの下で売却していく必要があると思う。
そこで、臨海用地の分譲促進のための企業へのインセンティブがあるのか、あわせて、今後の臨海用地売却促進に向けた取組について、どのように考えているのか伺う。
【企業誘致課長】
企業へのインセンティブについて、企業庁では、特に臨海用地に限ったものではないが、企業の初期投資の軽減を図り、立地しやすい環境をつくるため、2002年度から土地リース制度及び分譲代金の長期分納制度を導入した。また、不動産取得税の軽減や産業空洞化対策減税基金に基づく補助制度など、県の産業立地優遇制度や市町が所管する各種の立地奨励金等がある。
今後の臨海用地の売却促進については、こうしたインセンティブ制度の周知を図るとともに、臨海用地のセールスポイントである港に近接し、工業用水、特別高圧電力などの産業インフラが完備していること、比較的安価で大規模なニーズに対応できることなどを積極的にPRしていく。
こうした企業誘致活動のほか、県東京事務所に常駐させた企業庁職員により、首都圏に本社がある大手ゼネコンやメガバンクなど、不動産関係の情報が多く集まる企業との積極的な情報交換を行うなど、県外企業の新たなニーズの掘り起こしに努めていく。
また、不動産取引の専門家と仲介委託契約を結び、分譲、リース契約が成立した場合に成功報酬を支払う仲介委託制度や専門的知見から助言をもらう企業誘致アドバイザー制度など、民間ノウハウを活用し、早期の売却に向け、積極的な企業誘致活動を実施していく。
【小木曽史人委員】
分譲促進のためにリース制度を導入しているということだが、リース制度を促進することで事業経営への影響は生じないのか。
【企業誘致課長】
リース制度は企業の初期投資の軽減を図る目的で導入しているが、リース料はリース期間中の支払利息と管理的経費の回収を基本としているため、企業債の償還財源まで確保できない懸念がある。償還財源を確保するためには売却を促進することが何より重要であるため、リース契約中の企業に対しては積極的に購入の働きかけを行っている。特に企業債の残高を多く抱える中部臨空都市においては、リースから分譲への切替えを促進するため、支払済みリース料の2分の1を分譲代金から減額する優遇制度を導入するなど、経営を念頭に置いた分譲促進策に取り組んでいる。
【小木曽史人委員】
リース制度は2002年から開始し、契約期間は10年から20年である。20年の契約がほとんどであり、早いものでは令和6年4月には契約期間が満了になると考えられる。あと2年半ほどでリース期間が満了する立地企業への対応についてどのように考えているか。
【企業誘致課長】
リース制度は契約期間を10年から20年とする事業用借地権を設定するものであるが、法律上契約更新ができないため、期間満了をもって借地関係は終了する。そこで、借受人が引き続き操業継続を希望する場合、当該用地をリース期間満了までに購入するか、あるいは操業を終了して、建物を取り壊し、更地として企業庁に返還することが原則的な取扱いとなる。
【小木曽史人委員】
更地返還もしくは買取りということだが、企業は投資計画を立てて、多額の資金が発生する場合には2年、3年先を見て物事を考えていくため、リース契約が近く満了する企業に対し、買い取ってもらうよう働きかけを行うには、何らかのインセンティブを与えることが重要になってくる。このリース制度を活用して最終的に分譲につなげていくことを今からしっかり考えて、立地企業に買い取ってもらう方法等を相談してもらいたい。企業債の償還財源を賄うという意味からも、企業側のニーズをしっかりくみ取って、知恵と工夫でお互いにウィン・ウィンの関係となるよう取り組んでもらうことを要望する。