令和3年11月定例会(第4号) 本文 2021-12-03
◯一番(小木曽史人君)
新政あいちの小木曽でございます。
私からは教育について、直接お聞きした御意見を基に、総論と個別具体的な各論部分の県教育委員会の考え方と取組について順次質問をしていきたいと思いますが、先ほどの今井議員、中村議員の質問と説明部分で若干重なる部分がありますが御容赦いただきたいと思います。
さて、最近の教育環境変化に基づく教育現場の課題について、私は大きく以下の四つがあると認識しております。
一つ目は、新学習指導要領の導入への対応です。小学校ではコロナ禍の始まった二〇二〇年度から、中学校では今年度から実施されており、高等学校では来年度から実施されます。
二つ目は、特別な支援を必要とする子供への対応です。発達障害児や医療的ケア児を含む障害者、日本語指導が必要な児童生徒など、きめ細かな対応を必要とする子供たちは増加しており、人的配置の拡大などサポート体制の整備がこれまで以上に求められています。
三つ目は、GIGAスクール構想による一人一台端末の活用です。こちらもコロナ禍での学びの保障ツールとして今年度早々までに県内全ての小中学校に計画前倒しで配備され、その活用が模索をされております。
四つ目は、不登校児童生徒への対応です。本年十月に公表された文科省調査によると、新型コロナウイルス感染症が拡大した二〇二〇年度全国の国公私立小中学校の不登校児童生徒は十九万六千百二十七人で、前年度より一万四千八百五十五人増加して過去最多となっております。
愛知県でも二〇二〇年度は一万三千二百六十三人、前年度より千百十二人増加し、毎年増加傾向にあるとお聞きをしております。
こうした子供を取り巻く教育環境の変化への対応に加え、新型コロナウイルス感染症拡大という追い打ちの中、教育現場を必死で支え、子供に向き合っている現場の教員の皆様には改めて敬意と感謝を申し上げるとともに、多忙な中で要求される学びの保障、きめ細かな学習指導と評価の在り方に大きな負担感と不安感を持たれていることに思いを致すところです。あわせて、教育現場での不安感は子供を持つ保護者にも同様に存在していることも付け加えておきます。
そこでまずは、一つ目の新学習指導要領についてですが、総論的な部分として教育現場、特に小学校教育現場における教員による実践の落とし込みについて考察をしていきます。
新学習指導要領のよって立つ理念は、主体的、対話的で深い学びの視点から、何を学ぶかだけではなく、どのように学ぶかを重視するとしており、学びを人生に生かす、同じ物事でも多様な捉え方をすることでこれまで気づかなかったことに気づく、考えもしなかったことにまで考えを深めるとしています。つまり対話、議論しながら様々な意見を聞き、自分なりの物の見方や考え方、価値観を育んでいく、なぜどうして、本当に正しいのかといったクリティカル・シンキングを伸ばすことが目的であると理解できます。
こうした理念に基づく学習指導、評価の実践が現場レベルで求められるわけですが、実際には、特に小学校教育現場で、教員自身が新学習指導要領のこの理念を腹に落とし、具体的な実践をしつつ児童の理解度進捗評価ができているのでしょうか。
ここで、一例として小学校六年生の算数テストの設問の評価について、ある保護者からの声を御紹介したいと思います。議長のお許しをいただきましたので、どのような設問に対しどのような評価であったのか、パネルを用意しましたのでこちらで御説明をいたします。
〔パネル図を示す〕
三角柱の体積を求める図形問題です。懐かしい思いを持って少しお付き合いください。
三角柱の体積は底面積掛ける高さで求められます。そこで本設問は、まず底面積を求め、次の設問で高さを掛けて体積を求める立てつけになっております。底面積は直角三角形ですので底辺掛ける高さ割る二、つまり斜辺以外のほかの二辺を掛けて半分にすれば底面積が求められます。
ちょっと字が小さいですけれども、こちらが小学校六年生の子が書いた解答、こちらの辺を底辺として四掛ける五割る二と式を書きました。結果、評価として式は三角、答えは丸。もちろんこの設問には、どの辺を底辺とするという条件は一切付していないことを申し添えておきます。
子供が持ち帰ってきたテストを見た保護者は疑問に思い、ちょうど個人懇談のタイミングがあったので、その疑問を担任教員に聞いたそうです。すると、迷った末に三角にしました、ただ教員によってはバツだと思いますとの返答。理由としては、正面から見た場合、底辺はあくまでこの五センチであり、高さが四センチとして式を立ててほしいとのこと。保護者の方はもやもや感が消えないので周りにも聞いてみたところ、丸なのではという反応が大勢を占めていたようです。
私自身もこのお話を聞き、周辺の方に同じように聞き取りを行いました。結果はほぼ丸。県教育委員会の義務教育課職員の方にも複数聞き取りをしていただきましたが、全て丸という反応でした。周辺への聞き取りで保護者の多くが、このような小学校テスト評価への疑問を算数に限らずほかの教科にわたって感じられているという事実も同時に知ることができました。教員は学習指導、学校教育のプロです。素人である保護者が疑問を挟みにくいため、その疑問を学校や教員にぶつけることは差し控えているという保護者の声もありました。
しかしながら、実際に社会に出ている大人が当然のように丸ではと考えている常識が小学校では三角ないしバツになるような画一的な評価がされているとすれば、これは授業の中でどれだけ新学習指導要領がうたう理念に基づいた手段としての学習指導を行っていようとも、評価の段階で結果として子供及びその保護者には学ぶことへの疑問や不安を増幅させることになるのではないでしょうか。
この具体的ケースの教員は個人懇談の場での保護者の疑問の進言に対し、こういった声はとてもありがたい、本ケースを仲間の教員と勉強していきたい、これからも疑問に思ったことはぜひ教えてほしいとおっしゃったそうです。
少し長くなりましたが、これは重箱の隅をつつくといった小さな話ではないと思います。
授業はあくまで手段です。多角的な視点から物事を学ぶ力を養うことになっているのか、いわゆるテストの模範解答に疑問を抱かず、無意識のうちに教員自身の経験や常識、価値観にとらわれていないか、画一的な物の見方のみを良としていないかという新学習指導要領のうたう理念の実践レベルでの根本に関わる問題のような気がしてなりません。
前段で申し上げたとおり、教員自身も近年の様変わりした教育環境への対応と多忙化と相まって、小学校教育現場では、不安を抱えつつも精いっぱい子供に寄り添った手探りの学習指導を模索していることは十分承知しております。
ただ今後、国の教育施策の方向性としては、教員免許更新制度を廃止し、小学校高学年における一部教科担任制の導入を視野に議論が進められている中で、新学習指導要領のうたう理念、目的、つまり魂の部分が抜け落ち、アクティブ・ラーニングやタブレット端末の活用などの手段の話ばかりが先行した教育現場での学習指導が行われているとすれば、本末転倒の話になりかねません。
そういった観点から、以下質問いたします。
上述した具体例を踏まえ、二〇二〇年度から始まった小学校教育における新学習指導要領のうたう理念が教育現場での学習指導や評価方法にどのように落とし込まれていると理解しているのか。
また、理念を具現化するための教員の評価方法への学び直しを含めた学習指導力の向上、研さんの機会をどう確保し現場実践につなげていくのか、今後の取組についてお伺いいたします。
次に、二つ目の課題、特別な支援を必要とする子供への対応についてですが、中でも県立高校のインクルーシブ教育について総論と各論に分けて考察し質問をしていきます。
インクルーシブ教育とは、障害者権利条約の中で障害のある子もない子も一緒に学び、共生社会、多様性を認め合う社会を実現していこうとする基本的な考え方と定義されており、日本も二〇一四年に条約を批准、その考え方は障害者基本法、障害者差別解消法をはじめとする法律等々の中に、障害者への不当な差別的取扱いや社会的障壁の除去を含めて、その自立や社会参加支援を総合的かつ計画的に推進するよう落とし込まれています。
こうした背景の中、近年の特別な支援を必要とする児童生徒数の増加に鑑み、障害児及びその保護者の不安や負担を軽減するため、特別支援学校を機能面や受入れ人数面でも充実させることはニーズの高まりからも大変重要であり、本県ではきめ細かな対応を着実に推進されていることと理解をしております。
少子化に歯止めがかからず、高校生以下の児童生徒数は減少傾向をたどる中、結果として特別支援学校を希望する児童生徒は増加傾向にあり、特に小中義務教育課程で通級指導や特別支援教室も活用しながら地域の学校に通っていた子供が特別支援学校高等部へ進学するケースが多く見られるという現実もあります。
一方で、あいち障害者福祉プランの中では、障害のある幼児児童生徒に提供される配慮や学びの場の選択肢を増やし、可能な限り共に教育を受けられるよう、インクルーシブ教育システムを推進し、基礎的環境整備及び合理的配慮の充実した教育諸条件の整備を図ると明記をされております。
あわせて、あいちの教育ビジョンの中でも、県立高等学校におけるインクルーシブ教育システムの構築に向けた環境整備の充実について検討するとしており、これは小中義務教育課程のみならず、高校教育段階での共生による未来に向けた心のバリアフリー社会の意識醸成が大変重要な視点であるとの認識を示しているものと理解できます。
そこで、まずはあいちの教育ビジョンにうたうインクルーシブ教育システム推進に対応した、特に義務教育課程修了後の特別支援学校高等部と県立高校との兼ね合いや考え方、県立高校でのインクルーシブ教育システム推進に向けた取組についてどのように考えているのか、現在策定が進められている県立高等学校再編将来構想での検討状況も含めてお伺いをいたします。
次に、各論として、障害者が県立高校へ進学する際の障壁と考えられるケースについて具体的に考察をしていきます。
県立高校のインクルーシブ教育推進を環境面から支える施策としては、まず県立高校のハード整備、つまり学校施設のバリアフリー化が挙げられると思います。
こちらについては、県立学校施設長寿命化計画と人にやさしい街づくりの推進に関する条例に基づき計画的に進められており、障害のある教員や校務補助員の配置、障害のある生徒の入学等個別にバリアフリー化が必要となる場合にも、例えば車椅子に乗ったまま階段の乗り降りができる階段昇降機の配備など柔軟に対応するともお聞きをしております。
県立高校の校舎を避難所として利用する地域ニーズも高いことから、今後も学校施設のバリアフリー化をしっかり進めていただくことを改めて要望いたします。
では、ソフト整備、人的配置や手続、仕組みについてはどのような障壁が考えられるのか。軽度ではあるが喀痰吸引や胃ろうなど看護師や介護福祉士等有資格者による医療的ケアが必要となる中学生が県立高校への入学を希望した場合について、私が具体的な困り事として相談を受けた事例に基づき聞いていきたいと思います。
相談者Aさんは地元中学に通う三年生。幼少より喀痰吸引が必要で、現在は中学校に看護師を配置してもらい、地域のほかの子供らと同じように学校生活を送っています。Aさんは今回県立高校の受験を希望しており、Aさんの保護者は受験時及び晴れて県立高校に通うことになった場合に、県としてのいわゆる合理的配慮に基づく医療的ケアとして必要な有資格者人員の確保や体制整備について声を上げられました。
この合理的配慮は、二〇一六年に施行された障害者差別解消法上明記された自治体の法的義務で、当事者から社会的障壁によって生まれた機会の不平等を正してほしい旨の意思表明があった際、行政は加重な負担とならない場合は必要かつ合理的な配慮をすることが求められるとするものです。
この合理的というのは、自分にも他者にも理にかなった合理性であり、つまり行政、障害者どちらか一方的な要望や事情を考慮するものではなく、双方の建設的な対話から相互に理解、納得し、その手段や方法、代替手段の検討がなされたものと一般的に理解されています。
Aさん及びその保護者の方は、小中義務教育課程修了後の県立高校進学の際には受験時を含めた対応の主管が県教育委員会に移るとして、早い段階からこの合理的配慮を県教育委員会に相談をしていたようです。
そのような経緯をお聞きする中から私が課題であると認識したのは、Aさんのようなケースの場合、受験時の合理的配慮については、県教育委員会としても個別事情に応じて中学校や市町村教育委員会と連携しながら検討し取り組んでいることは理解しつつも、一定程度明確な仕組みや手続にのっとって対応すべきところが担当職員のノウハウによるところが多く、やや不明確であるということ、そして、県立高校入学後については、医療的ケアが必要な生徒に対する実施要綱について整備されていないということです。
現状、高校ごとに看護師等有資格者が配置されていることはありません。しかし、Aさんやその保護者にとっては、受験時ひいては進学後の有資格者の配置は高校を選択するための絶対条件であり、いつ頃までに相談をすればどのような配慮がしてもらえるのかとても不安ですし、有資格者の配置ができないことをもって希望する県立高校への進学の道が閉ざされることはあってはなりません。そのためにも、医療的ケアを必要とする生徒及びその保護者の立場に立って、県教育委員会としても建設的な対話から納得感のある対応を検討するための仕組みや手続を明確にした上で身構えをしておくことが必要と考えます。
国では今年、医療的ケア児支援法が成立し、その中ではケア児と保護者の意思を最大限に尊重と理念に明記され、国や自治体による責務がうたわれております。
そこでお伺いをいたします。
医療的ケア児と保護者の意思を最大限尊重した対応が求められる国の法施行も踏まえ、県立高校の入学選抜時の医療的ケア児に対する合理的配慮としての有資格者の配置を含めた対応について、どのように課題を認識し、当事者に寄り添った手続方法や仕組みを今後どのように改善していくのかお伺いをいたします。
あわせて、ほかの生徒と同様なタイミングでのスムーズな入学を実現し、高校生活を支障なく送ることができるための仕組みづくりについて、県立高校入学後における医療的ケアの実施要綱の整備も含めてどのように取り組んでいくのかお伺いをいたします。
最後に、冒頭に述べたその三の課題、GIGAスクール構想による一人一台端末の活用にも関連しつつ、その四の課題で挙げた不登校児童生徒への対応として、小中学校における不登校児童生徒のICT機器、いわゆるタブレット端末を活用した学びの保障について質問をしていきます。
二〇一六年に公布されたいわゆる教育機会確保法において、教育機会の確保等に関する施策の推進に対し、国や自治体の責務が明記され、県としても不登校児童生徒への対応をさらに充実させることが求められています。
学級担任、養護教諭、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー等の学校関係者が中心となり、児童生徒と保護者に寄り添いながら個々の抱える事情を解きほぐしつつ個別状況に応じた支援を進めることはもちろん、学校と適応指導教室や不登校特例校、フリースクールなど居場所づくりに加え、タブレット端末等のICTツールを活用した学習支援を行うなど、不登校になっても学びの保障の視点からあらゆる角度で多様な教育機会が与えられるべきなのは言うまでもありません。
タブレット端末の活用については、濃淡はあるものの実際の県内小中学校教育現場で活用され、学校へ通う児童生徒はその恩恵を受けつつ日々学びを深めています。
一方、不登校児童生徒については、一部端末の持ち帰りを認めている自治体は別として、多くの自治体が持ち帰りのルールづくりが未整備のためか端末の持ち帰りを認めておらず、結果その端末に触れ学ぶ機会が失われている現実もあります。
また、地域差はあるものの私の地元では、不登校児童生徒のうち約三割の子が適応指導教室という学校とは別の空間に通っており、その適応指導教室ですらWi─Fi環境及びタブレット端末未整備である自治体が多いとも聞いています。
ある適応指導教室にお邪魔した際、その責任者の方がおっしゃっていました。適応指導教室に通う子、家庭にいる子の中には、学校に行きたくても行けない、でも学習はしたいと考えている子もたくさんいる、いずれは学校へ復帰することも望んでいる子ももちろんいる、そういう子に対し、不登校であることによる学習の遅れが心理的に学校復帰や進路選択の妨げになってはいけない、小中学校で端末を使った学習が進められているなら、その環境を不登校の児童生徒にも与えてあげたい、タブレット端末には自学自習できるアプリがセットアップされている、もしあれば様々な工夫の中で私たちも勉強しながら子供たちと一緒に端末を利用した学習活動をしていきたい。
なお、文科省も令和元年十月に不登校児童生徒への支援の在り方についてと題した通知を自治体及び教育委員会宛てに発出しており、その中でその支援の在り方を再度整理し直し、不登校児童生徒がICT等を活用した学習活動を行った場合に、一定の要件の下で指導要録上、出席の扱いとすることができるようにしています。
タブレット端末を活用した学習活動の在り方については、その持ち帰りの可否も含めてまずは市町村教育委員会の判断によるところではあると思いますが、不登校児童生徒の学びの保障の観点からは、県としても、全県的な課題として認識の上、現状を把握し、環境整備についてコミットしていく必要があると考えます。
そこでお伺いをいたします。
県内でタブレット端末を不登校児童生徒に配付している自治体は幾つあるのか、また、適応指導教室にWi─Fiを整備しタブレット端末を利用できる環境にしている自治体は幾つあるのかお聞かせください。
あわせて、そういった現状に対し不登校児童生徒へのタブレット端末を活用した学習活動について、県教育委員会の課題認識を含めた考え方と今後県内で環境整備がなされるためにどういった取組を進めていくおつもりなのかお聞かせください。
以上、明快な御答弁を期待し、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)
◯教育長(長谷川洋君)
教育環境整備に関しまして様々な角度からお尋ねをいただきました。順次お答えをさせていただきます。
初めに、小学校の教育現場での学習指導や学習評価についてお答えいたします。
新しい学習指導要領では、何を学ぶかだけではなくどのように学ぶかにも視点が当てられ、主体的、対話的で深い学びの実現に向けた授業改善を推進することが求められております。
県教育委員会では、二〇一七年三月の学習指導要領告示以降、新しい学習指導要領についての理解を深めるため、学習指導要領説明会や学習指導要領講習会等の伝達講習を実施し、繰り返し新学習指導要領の趣旨等の周知を図ってまいりました。
各小学校の学習指導の状況につきましては、本年五月に実施されました全国学力・学習状況調査の中の学校に対する質問調査では、話し合う活動を通じて自分の考えを深めたり広げたりすることができているかとの質問に対して肯定的に回答した小学校の割合が前回調査より五・八ポイント増加するなど、主体的、対話的で深い学びの視点からの授業改善に関する取組が進んでいると認識をしております。
また、評価方法の状況につきましては、同じ調査で学習指導と学習評価の計画の作成を教職員同士が協力して行っている小学校の割合が九〇%を超えておりますことから、教職員が連携して適切な評価がなされていると認識をしております。
県教育委員会といたしましては、こうした調査結果から、小学校における新しい学習指導要領についての理解が一定程度浸透しつつあるのではないかと考えております。
次に、学習指導力の向上、研さんの機会の確保についてお答えいたします。
県教育委員会では、県内教員の学習指導力の向上を図るため、毎年八月に小・中学校教育課程研究集会を開催しております。各地区における教科指導研究の中心的立場にある教員が参加して各教科の指導方法や評価方法を学び、その内容をそれぞれの地区で研修会等を開催するなどいたしまして広めております。
また、本年度は豊橋市の小学校に委嘱をし、深い学びを実現するための指導や評価の在り方について研究を進めております。豊橋市の研究の成果につきましては、各地区における学習指導力向上研修に活用できるよう、義務教育課のウェブページに掲載するなどして積極的に情報発信をしてまいります。
各学校の研修につきましては、本年度の全国学力・学習状況調査で学習活動を学ぶ校内研修を行っていると回答した小学校の割合が約八ポイント増加して七三・九%という高い数字となるなど、確実に進んでいると認識をしております。
今後も、学習指導要領の理解を深めることにより教員のさらなる指導力向上を図れるよう、研究集会や研究委嘱事業を充実させてまいります。
次に、県立高校のインクルーシブ教育についてのお尋ねのうち、本県におけるインクルーシブ教育の考え方と高校での取組についてお答えいたします。
まず、インクルーシブ教育の考え方についてでありますが、あいちの教育ビジョン二〇二五におきましては、特別な支援を必要とする子供が幼稚園から高校までどの段階においても適切な支援や指導が受けられるよう、全ての学校種において特別支援教育を推進することとしております。
義務教育を終えた特別な支援を必要とする生徒に対しては、高校の通常の学級や通級による指導、特別支援学校の高等部といった多様な学びの場が選択できるよう努めてきたところであります。
次に、県立高校におけるインクルーシブ教育の推進に向けた取組についてでありますが、入試において障害等のある生徒に受験上の配慮を行うとともに、入学後は一人一人の教育的ニーズに対応した支援を行うため、特別支援教育支援員を配置しております。また、各高校で特別支援教育のコーディネートを担う教員を対象とする研修会を実施しております。
さらに、一部の授業で社会的適応力を高めるための活動を行う通級による指導を二〇一七年度から高浜高校で開始し、その後実施校を拡大して現在は四校で行っております。地域バランスなどを考えながら引き続き実施校の拡大を検討してまいります。
また、県立高等学校再編将来構想案では、豊川市の御津高校において、外国にルーツを有する生徒や特別な支援を必要とする生徒など多様な生徒が学ぶインクルーシブな学校づくりを目指すこととしております。
こうした取組を通して、今後も県立高校におけるインクルーシブ教育の充実を図ってまいります。
次に、高校入試における医療的ケア児への合理的配慮についてお答えいたします。
本年九月に施行されました医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律では、学校の設置者である教育委員会は、医療的ケアを受ける生徒、保護者の意思を最大限尊重した上で適切な支援を行う責務を有すること、また、保護者の付添いがなくても適切な医療的ケアが受けられるよう、看護師等の配置その他の必要な措置を講ずることとされました。
また、法の施行に際した文部科学省通知には、これから入学する予定の生徒を含めて切れ目のない支援を行う必要があることや学校における医療的ケアのガイドラインを策定すべきことなどが示されております。
本県の公立高校入試では、愛知県公立高等学校入学者選抜実施要項に基づいて障害等のある生徒への受験上の配慮を行っておりますが、今後は申請書の様式を工夫するなど生徒、保護者の意思が十分反映される手続とすることや生徒、保護者に手続を含めた詳細を周知していくことが課題であると認識をしております。
したがいまして、中学校三年生向けのリーフレットや教育委員会のウェブページの内容を申請方法を含む一層詳しいものとして、医療的ケアを必要とする中学生と保護者が安心して高校入試に臨めるよう努めてまいります。
続いて、医療的ケアを必要とする生徒への入学後の支援についてであります。
公立高校に進学する生徒は、三月中旬の合格発表によって進学先が決まりますので、医療的ケアを必要とする生徒に切れ目のない支援を行うためには、合格発表後、速やかに進学先の高校と保護者、医療機関等が連携して準備を進める必要がございます。そのための体制づくりとして、今回の医療的ケア児支援法の趣旨を踏まえまして県立高校で適切な支援を行うための実施要綱を現在策定しているところであります。また、生徒が在学中継続的に医療的ケアを受けることができるよう、看護職員を学校に配置する仕組みについて検討を進めております。
教育委員会といたしましては、高校入試から卒業まで医療的ケアを必要とする生徒に対し切れ目のない支援を行うための体制づくりに取り組んでまいります。
次に、小中学校での不登校児童生徒に対するタブレット端末の利用状況についてお答えをいたします。
現在、小中学校の不登校児童生徒がタブレット端末を各家庭において活用している市町村は二十九ございます。また、適応指導教室においてタブレット端末が利用できる環境を整備している市町村は三十五でございます。
最後に、不登校児童生徒のタブレット端末の活用についてお答えいたします。
文部科学省は、二〇二〇年九月に不登校児童生徒に対するICT等を活用した学習支援についての通知を発出し、ICT等を活用した学習支援や相談支援の積極的な実施を求めております。本県といたしましても、この通知の趣旨を踏まえ、不登校児童生徒がタブレット端末を活用することで教育の機会確保、学習の遅れの軽減、学習意欲の維持、向上につながるものと考えております。
しかしながら、環境整備につきましては、GIGAスクール構想が急速に進められていることもあり、市町村によって状況に差が生じているところもあると認識しております。
今後、先進事例を生徒指導主事会等で紹介し、全ての市町村において不登校児童生徒がタブレット端末を有効に活用できる環境が充実するよう働きかけてまいります。
◯一番(小木曽史人君)
御答弁ありがとうございました。
それでは、私から三点要望をいたします。
まず一つ目、新学習指導要領の理念の小学校教育現場での落とし込みについては、授業改善が進んでいる、適切な評価をしている、新学習指導要領についての理解は一定程度浸透しているとの御答弁ですが、これはあくまで学校側、教える側にかけた調査結果への評価です。
私が申し上げたいのは、新学習指導要領が小学校教育現場で始まって一年半余り、現場にはその調査結果からはうかがえない課題があるのではないかということです。学校側がしっかりやれていると思っていても、新学習指導要領のうたう理念の反映がなされているか否かの判断指標は学校側、つまり教える側の先にある教育を受ける子供や保護者の受け止めであるべきです。
この原点を忘れることなく、教育長の言われた教員の指導力向上を図るための研修、研究を含めた取組を進めていただきたいと思います。
次に、二つ目です。先ほどの具体的な中学生のお話について、これから仕組みをつくっていくという御答弁ありがとうございました。
様々な事情を抱える生徒、そしてその保護者の思いをしっかりすくい上げられるように、特にそういった人的配置や仕組み、手続といったソフト部分に、今回の具体的事例とは別に、いろんな障壁となる課題がないか、再度丁寧に洗い出しつつ実情を的確に把握し、魅力ある県立高校としての役割の中にいわゆるダイバーシティーとインクルーシブの考え方が深く刻み込まれているという認識の下、ぜひ多様な生徒が共に学び合える環境整備を具体的に進めていただきたいと思います。
最後に、不登校児童生徒のタブレット端末活用状況について御答弁いただきました。
県内市町村の状況についてですが、環境を整えていると回答した自治体でも活用するか否かは学校判断に委ねられているところもあるとお聞きしており、実際には数字ほど取組が進んでいない状況が推察されます。
新型コロナウイルス感染症拡大を受け、タブレット端末を活用したオンライン授業に取り組む県内自治体もあるとお聞きをしておりますが、コロナ禍での一時的な取組にとどまらず、不登校や病気などで長期欠席する児童生徒に対するきめ細かな対応、学びの保障として広く県内で利活用できるような環境が充実するよう、市町村への働きかけを含めしっかりサポートしていただくことを要望し、質問を終わります。