令和4年県民環境委員会 本文 2022-06-23

【小木曽史人委員】
 私立高校での海外留学時における犯罪被害等への注意喚起、いわゆるガイダンスについて伺う。
 県内の私立学校では海外留学に力を入れて取り組んでいる高校等があるが、私立高校等の生徒が留学する際、生徒の氏名や渡航先等の情報について私学振興室は把握しているのか。

【私学振興室担当課長(認可・助成)】
 私立学校の児童生徒が留学、修学旅行などで海外に旅行する際には、その学校から行き先、期間、人数、緊急連絡先等を記載した旅行届を出発日の25日前までに私学振興室に提出することになっている。
 この届出により、私学振興室でも旅行内容を把握しているが、生徒の氏名については届出内容となっていないため把握していない。

【小木曽史人委員】
 学校から提出される旅行届について、私学振興室はどういった処理をしているのか。

【私学振興室担当課長(認可・助成)】
 旅行届については、外務省と文部科学省に報告し、渡航先で事件、事故等に巻き込まれたときのために情報共有している。

【小木曽史人委員】
 最近の海外留学等の実績はどうなっているのか。

【私学振興室担当課長(認可・助成)】
 コロナ禍前の令和元年度は約120件の届出があったが、令和2年度と昨年度は1件である。本年度は現時点で7件の届出が提出されている。

【小木曽史人委員】
 海外留学情報は旅行届によって把握しているということだが、留学中、犯罪等に巻き込まれた事案は把握しているのか。把握しているのであれば、その実態はどうなっているのか。また、県内私立高校等に在籍する生徒が被害に遭った事案は把握しているのか。

【私学振興室担当課長(認可・助成)】
 生徒等の生命、心身、または財産に重大な被害が生じた場合には、学校から本県に報告する必要があるが、過去5年間で報告はない。

【小木曽史人委員】
 国内ではインバウンドの受入れが拡大しつつあり、私立高校で、既に本年度7件の届出があるとのことだが、今後、海外留学等も件数が増えてくると予想される。
 海外に留学するに当たっては、行き先により治安に不安がある地域もあり、様々な犯罪等の被害に遭う可能性がある。
 まずは安全確保という観点から、留学前に犯罪等の被害リスク、実際に被害に遭った場合の対処として事前にしっかりガイダンスをしておくべきと思うが、現状、留学を進める私立高校はどのようなガイダンスを実施しているのか。また、私学振興室はどのように関わっているのか。

【私学振興室担当課長(認可・助成)】
 令和元年5月に、私立学校に対して海外渡航する児童生徒の安全を確保するため、生徒、保護者に対して外務省海外旅行登録、いわゆるたびレジへの登録を指導するよう通知した。たびレジに登録すると、安全情報をメールで受け取れるほか、緊急時の連絡、安否確認、支援などが受けられる。また、外務省のホームページでは、留学する人に対して出発までの事前準備と滞在中のトラブル対策が掲載されているため、外務省のホームページから最新情報を入手するよう通知している。

【小木曽史人委員】
 実際に、私立学校の生徒がホームステイ先でホームファーザーから性的被害に遭ったという事例を聞いている。内容は強制性交までの被害ではないものの、わいせつ行為は数か月にわたり複数回続いたということだった。その生徒は、親に心配をかけたくない、せっかく留学できたのに途中で帰りたくないと思い悩み、誰にも相談できなかったという。
 昨年3月にも文部科学省の留学支援制度で、留学した学生が性暴力を受ける事案が相次いだと、参議院の文部科学委員会でも取り上げられ、文部科学大臣も渡航前のオリエンテーションの充実や具体的なアドバイスが必要であるとしている。実態調査についても機会を捉えて精査し、積極的な啓発活動とともに安心して学生が留学できる環境を充実させる方策を検討していきたいと答弁した。  コロナ禍で海外留学はほとんど行われなかったが、今後増えると思われるこの時期に、性犯罪等の被害リスクや実際に被害に遭った場合の対処について、留学先の犯罪トレンドを踏まえたガイダンス内容を見直し、再度しっかりと説明するよう私立学校側に徹底すべきと考えるが、私学振興室の考えを伺う。

【私学振興室長】
 令和元年5月に海外修学旅行等の安全確保についての通知を行ったが、令和2年からコロナ禍でほとんど海外留学等が実施されてない。本年度は徐々に増えていくことが予想されるため、渡航前にガイダンスを実施して、改めて海外留学等の注意点などを生徒や保護者に説明及び周知したい。

【小木曽史人委員】
 先ほど、実際に発生したホームファーザーからの性的被害の事例について説明したが、過去5年間は私立学校からの報告はなかった。そのため、情報が上がって来ず、現状を把握できないところに非常に問題があると考える。
 事前に身を守る方法や、被害に遭った場合どうすればよいのかなど、特に海外留学に力を入れている私立学校に対して、安心して学生が留学できる環境が整備されているのか、私立学校が事前にしっかり調査するよう県からも働きかけてほしい。
 次に、あいち消費者安心プラン2024に掲げる高齢者等見守りネットワークの設置促進について伺う。消費者被害の相談件数の推移について、昨年度は2020年度と比較して若干減少しているものの、身に覚えのない架空請求などの相談、化粧品や健康食品などの試供品申込みが定期購入だったなどの相談は増加傾向にある。年代別では30歳未満の割合が上昇しており、インターネットを通じた副業に関する相談やSNSを介したトラブルの相談が多いことも挙げられる。
 一方、70歳以上の高齢者の相談件数は減少傾向にあるが、相談内容としては、屋根の無料点検といって訪問しながら修理工事の契約を促す点検商法の相談や、不用品を買い取る名目で家に上がり込み貴金属を安値で買い取る訪問購入の相談が多数寄せられている。
 あいち消費者安心プラン2024には、特に高齢者、障害者等、生活弱者の消費者被害を防止するため高齢者等見守りネットワークの設置促進を掲げているが、そもそも高齢者等見守りネットワークとはどのようなものか。また、これを設置することで高齢者等の消費者被害を防ぐことができるのか、目的と期待できる効果を伺う。

【県民生活課長】
 あいち消費者安心プラン2024における高齢者等見守りネットワークとは、消費者安全法に規定されている消費者安全確保地域協議会のことであり、地方公共団体の関係機関に加え、高齢者等の見守りに関わりのある福祉・医療団体、金融機関、事業者などにより構成される会議体である。
 消費者安全確保地域協議会では、当該地方公共団体の区域における消費者安全の確保のための取組を効果的かつ円滑に行うため、消費生活上特に配慮を要する消費者である高齢者、障害者等の見守りなど、必要な取組を行うための情報交換や協議などが行われる。
 設置による効果について、見守り活動に必要となる高齢者等の情報の目的外利用や第三者への提供は、個人情報保護法等において、原則本人の同意がなければ行うことができないとされている。他方、消費者安全法では、高齢者等見守りネットワークはその構成員から見守りに必要な情報の提供を求めることができる旨が規定されており、消費者被害が疑われる人の情報を本人の同意を得ずに構成員である消費生活センター等の機関につなげたり、構成員間で共有することで、早期の解決につながることが期待されている。

【小木曽史人委員】
 県内ではどの程度高齢者等見守りネットワークの設置が進んでいるのか。

【県民生活課長】
 本県においては、福祉・医療団体、消費者団体、金融機関等からなる愛知県高齢者等消費者被害見守りネットワークづくりのための関連団体連絡会議を2016年度に設置した。市町村においては、本年4月末現在で26市町において設置され、人口カバー率は77パーセントとなっている。
 消費者庁は、地方消費者行政強化作戦2020において人口カバー率50パーセント以上を掲げており、本県はこれを上回っているが、本県の消費者安心プラン2024では2024年度末までに85パーセント以上を目標として掲げており、引き続き設置促進を図っていく。

【小木曽史人委員】
 人口カバー率では本年4月末現在26市町で77パーセントということであるが、海部地域、知多地域では設置が進んでいない。どのように考えているのか。

【県民生活課長】
 海部地域の7市町村と知多地域の6市町に共通する事情として、消費生活センターを広域で設置しており、市町村の消費者行政担当課において直接消費生活相談を受け付けていないことが挙げられる。
 昨年度、市町村の高齢者等見守りネットワークの設置等に係る調査を行ったところ、これら地域からは、広域で消費生活センターを設置しており、構成市町との協議が必要なこと、近隣市町との歩調を合わせること、人員や財源の不足といった意見が寄せられている。
 こうした中、知多地域においては昨年度、市内に消費生活センターがある半田市において高齢者等見守りネットワークが設置されたことから、海部地域等においても設置の可能性はあると考える。

【小木曽史人委員】
 設置が進んでいない地域に対して、今後、県はどのように設置を進めていくのか。

【県民生活課長】
 昨年度、見守り活動の参考とするため、県内の市町における高齢者等見守りネットワークの設置や取組の状況、他県の先進事例等を掲載した高齢者等消費者被害見守りハンドブックあいちを作成した。今後は、このハンドブックを活用し、会議等の場において設置を呼びかけるほか、未設置の市町村を個別に訪問するなどして、高齢者等見守りネットワークの必要性を理解してもらい、新たな設置を働きかけていく。

【小木曽史人委員】
 高齢者や障害者等、消費生活上特に配慮が必要な人は、県内全域に存在している。消費生活センターを広域で設置していることで高齢者等見守りネットワークが広がっていかないということだが、相談したいが声が届いていないというケースが考えられる。そういった所にこそ、この高齢者等見守りネットワークを積極的に設置した方がよいと考える。
 困っている人をいち早く救い上げるための高齢者等見守りネットワークを、県内全域に設置できるよう、県は具体的な手法を提示するなどして、市町村に働きかけるよう要望する。

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