令和4年9月定例会(第3号) 本文 2022-09-28

◯一番(小木曽史人君)
 それでは、通告に従い、順次大きく三点について質問をいたします。
 初めに、海部地域の地震による液状化対策、主に河川堤防と道路、ハード対策について伺っていきます。
 名古屋の西側、濃尾平野が広がる海部地域は海抜ゼロメートル以下地帯です。例えば県管理二級河川の日光川下流では、平常時の水位は堤防の外側にある二階建て家屋よりも高い位置にあり、初めてこの地域に来られた方の中には、これ、大丈夫なのとびっくりされる方もいらっしゃいます。
 伊勢湾台風でも甚大な被害を受けた地域であることは、皆様御存じのとおりでございますが、水害の危険性が非常に高く、有事の際に地域に住む方の命や暮らしを守るために、河道掘削や拡幅、しゅんせつ、排水機能強化など治水対策として様々な対策が実施されている地域です。
 土地が低いといったリスクに併せて、海部地域一帯には重大なリスクが潜んでいます。それは液状化です。地下十メートル程度のところに緩い砂の層があり、その下に約二十センチに及ぶ粘土層がある。その上、地下水位が高いため、地盤が液状化しやすい条件がそろっている地域と言われています。
 南海トラフ地震という未曽有の災害が発生する確率が高まっている今日、地震により堤防が沈下し、土地の低い海部地域一帯に河川の水が流入すれば、浸水は広範囲かつ長期にわたり、そこに津波が押し寄せればさらに被害は大きくなることは容易に想像できます。
 そういった意味でも、液状化による河川堤防の沈下を抑制するためのハード対策は極めて重要であり、対策必要箇所については迅速かつ適切な対応が求められております。
 では、河川堤防の液状化対策はどのような基準で実施されているのか。国土交通省は、河川構造物の耐震性能照査指針、以下、指針と申し上げますが、それを示し、これを基に対策が検討、実施されると伺っています。
 この指針は、一九九五年に起きた兵庫県南部地震後に、河川堤防耐震点検マニュアルが策定され、現在に続く耐震基準の基礎となり、二〇〇七年に策定をされました。その後、東北地方太平洋沖地震を契機に、二〇一二年、さらに二〇一六年に改定され、現在に至っています。
 つまり、基準が切り替わる以前、例えば東北地方太平洋沖地震以後の二〇一二年から二〇一六年までの河川堤防の液状化対策は、二〇一二年改定の指針に基づいて対策を実施しているわけです。  ただし、二〇一六年の指針改定時に耐震性評価項目の全てが厳しくなったというわけではありません。液状化による沈下の評価方法の見直し等で、想定される地盤沈下量が増加した地点もあれば減少した地点もあるため、現在の指針が示される前の対策が全て不十分というわけではないとのことです。
 加えて、河川堤防に求められる耐震性能は、理論上の最大モデルである地震動レベル二において、地震後も原則平常時の最高水位となっても、河川の水があふれるのを防止する機能を保持する性能を保つとされており、それは、一九九七年の指針策定以来、現在に至るまで変わっていないことも付け加えておきます。
 るる基準についてお話ししましたが、要するに、これまで海部地域の日光川水系、日光川本川と十四支川の河川堤防の液状化対策を進める中で、どの段階で調査をし、どの基準で液状化対策が必要と判断され、どこまで対策を実施したのか、また、指針の改定を経てどのように対策を実施してきたのか、そして、今後どういった計画なのかが非常に分かりにくいものになっていると思います。
 そこで、改めてではありますが、海部地域の南北を縦断する日光川水系の河川堤防の地震による液状化対策を含めた耐震化の考え方及び整備の進捗状況、今後の進め方についてお伺いいたします。
 続いて、道路です。
 道路の液状化対策といっても、国道から市町村道に至るあらゆる全ての道路を面整備することはおよそ不可能な話ですので、ここでは緊急輸送道路における橋梁の液状化対策について取り上げます。
 御存じのとおり、緊急輸送道路は、災害直後から人命救助や避難、そして避難されている方への必要物資の供給などのため、緊急車両の通行を確保すべき重要な路線です。地振動による落橋や液状化による橋脚崩壊、橋台と道路地盤との段差発生などが生じ、早期復旧がされないと人命に関わる緊急輸送道路としての機能が失われることは明白であり、その対策が重要であることは言うまでもありません。
 この橋梁の耐震性能は、一九八〇年、国道交通省によって道路橋示方書に基準が定められており、兵庫県南部地震、東北地方太平洋沖地震、熊本地震のたびに改定されています。性能の高い順に一から三まで三段階の基準があり、いずれの性能も、兵庫県南部地震と同程度の地震においても落橋には至らない性能を有することは当然ですが、最低限、耐震性能三、つまり地震による損傷が橋として致命的にならない程度の性能を満たしていなければ、被災時復旧に長時間を要することになります。
 緊急輸送道路は、第一次から第三次までありますが、愛知県では現在、第一次と第二次まで、合計二千八百五十六キロが指定されており、耐震性能二、つまり地震による損傷が限定的なものにとどまり、橋としての機能回復が速やかに行い得る程度の性能が求められています。
 そのうち、県管理道路は合計千五百三十三キロ、橋梁数は約七百二十橋で、耐震化進捗率は二〇二一年度末には八一%、道路橋示方書の改正都度、これまでの耐震対策も含めて耐震性能の保持を確認しつつ、対策を実施していると伺っております。
 海部地域はというと、県管理道路は合計百二キロ、橋梁数は七十三橋あります。ただ、第三次あいち地震対策アクションプランの計画期間である二〇二三年度までの対策完了見込みを含めて、全ての橋梁で耐震性能二を確保できるわけではないようですし、また、愛知県内では、まだ第三次としての緊急輸送道路は指定されておらず、有事の際に命と暮らしを守る重要な路線として対策が必要な箇所が存在する可能性があることも忘れてはなりません。
 以上を踏まえ、海部地域における県管理の緊急輸送道路の橋梁について、地震による液状化対策を含めた耐震化の考え方及び整備の進捗状況、今後の進め方についてお伺いをいたします。
 次に、県立高校の魅力化、特色化について、民間企業との連携、そして、不登校経験者や特別な支援を必要とする生徒のための学校について伺っていきます。
 県立高校については、県は二〇一五年度からの十年間のグランドデザイン、県立高等学校教育推進基本計画を策定。その実施計画に基づき、現在事業を進めており、さらにその先、二〇三〇年代半ばを見据えた県立高等学校再編将来構想の中で、県立高等学校の魅力化、特色化、再編の将来的な取組の方向性を示していると承知しております。
 デジタル化、グローバル化を含む社会経済状況は劇的かつ急速に変化しており、社会から求められる人材も多様化しており、基本計画では、キャリア教育と職業教育の一層の充実が掲げられ、実施計画の中で、具体的な高校別の事業や取組が示されております。
 そして、将来構想の中でも、産業構造の変化に対応した専門学科の創設やビジネス現場で主体的に行動できる人材の育成を図り、大学、企業、NPOなど外部の専門機関と連携した取組を進めるとしています。
 特に工業科や商業科などの専門学科の生徒は、学びを通じて、就職、専門学校への進学といった早い段階での実社会での活躍を目指している方も多く、また、その学びを通じて、大学等で高度な専門分野の探求、資格取得を目指す生徒も育成するなど、より実社会にコミットしたカリキュラムを編成していく必要があります。
 そういった意味で、特に専門学科においては、民間企業との連携をいかに充実させていくかが重要なポイントになると思います。
 一口に民間企業との連携といっても様々な形があり、例えば、職業を知るための座学や職業体験、実習、インターンシップなどインプット的なものももちろん重要ですが、商品開発やマーケティングを協働で手がけるなど、もう少し踏み込んだアウトプットが出せるような連携も工夫次第でさらに進めることができると思います。
 それにはまず、企業側のニーズと高校側のニーズのマッチングが不可欠です。今は企業側も事業活動を通じた地域社会への貢献、いわゆるCSRに力を入れているところも多く、例えば高校とコラボした商品開発などのニーズもあると思います。多くの選択肢から、その高校に合った企業連携メニューを選べる、例えばニーズマッチングのプラットフォームがあれば、もっと幅の広い企業と高校のウィン・ウィンの実践的かつ効果的な企業連携の可能性が広がり、そこにより多くの生徒にチャレンジしてもらうことで、その学びと活動が具体化され、生徒自身の達成感やさらなる学びへの誘発にきっとつながるはずです。
 そこで、まずは、この民間企業との連携、特に民間企業とコラボした商品開発など、より実践的でアウトプットを意識した県立高校と民間企業との協働活動について、教育委員会としてどのような姿勢で取り組んでいるのか、また、課題をどのように認識し、今後どのように取り組んでいくのかお聞かせください。
 加えて、県立高等学校再編将来構想の中では、まさに時代の変化を先取りした生徒の新たなチャレンジを前面的に支える学校として、犬山南高校を犬山総合高校に改編し、DX人材の育成やスタートアップマインドの育成に力を入れるとお聞きしています。
 再来年、二〇二四年十月には、スタートアップ支援拠点、STATION Aiの開業が予定されています。世界レベルのかなり高度なスタートアップのため、そのレベル感から、先ほど申し上げたアウトプット的な共同研究等は困難かもしれませんが、生徒がそのエッセンスを感じられるようなスタートアップとの連携は可能だと思います。
 そこで、来年度、総合学科へ改編する犬山南高校におけるスタートアップ企業等との連携についてどのようにお考えなのか、お伺いをいたします。
 続いて、不登校経験者や特別な支援を必要とする生徒のための県立学校についてです。
 今年度の県内中学生の高校進学率は九八・四%、高校無償化の流れも相まって、小中学校同様、高校も現状ほぼ義務教育化していると言えます。各種資格取得等職業選択の段階でも、実際には高校卒業、これには高卒認定試験合格者も含みますけれども、それが要件となっていることもあり、高校卒業は生徒にとってその後の社会参画やキャリア形成に大きく影響します。
 ただ、そういった中でも、義務教育段階から高校卒業までの成長過程や生活環境における複雑かつ多様な背景により、どうしても既存の学校になじめない児童生徒が多数存在しているため、そういった子供たちを高校卒業程度の年齢に至るまですくい取る、より個別最適な選択できる教育環境を提供する必要性がこれまで以上に高まっていると考えます。
 特に小中義務教育課程では、行政の責務、学びの保障を実施すべく、児童生徒の様々な情報を把握し、必要に応じて教育、福祉の面から各種支援メニューでケアを実施する体制が少なからず整備されていますが、小中義務教育課程を修了し、いざ高校進学段階となると、選抜の名の下に行政によるケアの目から離れる、つまり行政のセーフティネットから外れる可能性が高くなります。
 そんな中、県立高等学校再編将来構想の中で、特別な支援を必要とする生徒のためのインクルーシブな県立高校、御津あおば高校を設置するとし、併せて、先日、不登校経験のある子供等のための学校として、全国初の公立中高一貫の不登校特例校を設置する方向性が明らかになりました。先ほど申し上げた義務教育段階から高校卒業までの切れ目のないケアという意味では、ニーズを捉えた取組であり、その具体的な内容については今後詳細を詰めていくということですので、しっかり注視していきたいというふうに思っています。
 こうした方向性は、不登校生徒や外国にルーツを持つ生徒等特別な支援を必要とする生徒にとって、自分に合った高校を選んで学べる、選択肢が広がるという意味でも有意義である一方、インクルーシブ教育の観点や、そういった子供たちは県下全域、各地にいらっしゃり、行き場を求めていることからすれば、既存の県立高校、そしてこれから生徒数減少による県立高校の統廃合が進む中での学校利活用も含め、多様な生徒を受け入れる環境をさらに整えていく必要があると考えます。
 そこでお伺いをいたします。
 不登校生徒や外国にルーツを持つ生徒等特別な支援要する生徒に対する高等学校教育の在り方について、県教育委員会としてどのように考えていらっしゃるのか、課題認識も含めてお聞かせください。
 また、先ほど申し上げた、先日公表された公立中高一貫不登校特例校を含め、今後、御津あおば高校のようなインクルーシブな県立高校を県内全域にどのように広げていくおつもりなのか、今後の取組の方向性についてお伺いをいたします。
 最後に、後部座席のシートベルト着用率向上の取組について伺っていきます。
 今年の二月十二日、犬山市にて、犬山病院の職員計九人を乗せた送迎用のワンボックスカーが、右折時に横断歩道を渡る歩行者の前で停止、後部座席にいた方が停止のはずみで前のめりになり頚椎損傷、死亡するという事故が報道されました。お亡くなりになった方は後部座席でシートベルトをしておらず、僅か時速二十キロという低速での急停車によって命を落としたとのことです。
 まずは、御存じかもしれませんが、改めて後部座席シートベルト着用についての現行法上の位置づけを明確にしておきます。
 二〇〇八年六月、改正道路交通法の施行により、後部座席のシートベルト着用が義務化されました。未着用はれっきとした違反行為であることが明文化されているということです。ただ、高速道路においてのみ行政処分の違反点数一点が付される制度となっており、一般道においては着用義務がないと勘違いされている方もまだまだいらっしゃるのではないでしょうか。
 愛知県では、二〇一四年十月、愛知県交通安全条例が交付、施行され、県の責務として、第十三条では、家庭、学校、職場等における交通安全に関する教育の推進、第十四条では、自動車の全ての座席におけるシートベルトの着用徹底、チャイルドシートの適切な使用等々について、広報、啓発を行うと明確にうたっています。
 これを受け、県及び県警察としても、チラシ等広報媒体を作成し、春、夏、秋、年末の交通安全運動期間をはじめ機会を捉え、その教育及び普及啓発を実施していると承知しております。
 では、改めて、愛知県下のシートベルト着用率の推移を見ていきたいと思います。
 警察による取締りの強化もあり、昨年、二〇二一年の統計によると、運転席は九九・二%、助手席九六・七%と非常に高い着用率となっており、運転手によるシートベルト着用への意識の高さがうかがわれます。
 一方、後部座席はというと、取締り対象である高速道路では、先ほど申し上げた二〇〇八年の着用義務化を受け、その前年、二〇〇七年には僅か一六・三%だった着用率が、二〇〇八年には六三・二%、二〇二〇年には七九・一%となりましたが、昨年、二〇二一年は七七・四%と若干下落をしています。一般道路では、二〇〇七年には僅か一〇・三%だった着用率が、二〇〇八年には三七・三%に上昇、その後、緩やかには上昇しているものの、一昨年、二〇二〇年四二・九%、昨年、二〇二一年四四・〇%と着用率は五割に満たず、伸び悩んでおります。
 こうした背景もあってか、大村知事も、昨年六月定例議会本会議にて、議案説明の前段、県政を取り巻く最近の状況の中で、特に一般道における後部座席のシートベルトの着用率が五割未満にとどまっていることに対し懸念を示し、着用の徹底を呼びかけていくといった発言をされております。
 後部座席シートベルトを着用していない状態で事故に遭うと、その致死率は、高速道路では着用時の約一九・八倍、一般道路では着用時の約三・二倍に上るとも言われています。交通事故の衝撃で、車内で全身を強打したり、車外に放り出され、場合によっては運転席や助手席の人が被害を受けることもあります。今は車室三百六十度エアバッグを装備している車両もたくさんありますが、エアバッグはあくまでシートベルトの補助装置であり、特に後部座席は座席の前空間が広く、かつエアバッグを収納できる箇所が限定的であることから、交通事故時には、前座席よりもシートベルトの装着の必要性は逆に高いとも言えると思います。
 改めて後部座席での交通事故について知っていただくため、私の地元で交通安全啓発活動を精力的に行っている方、御本人の承諾を得ておりますので、実名で御紹介をいたします。
 その方、蟹江町の佐藤恵里さんは、後部座席のシートベルト着用が義務化されたちょうど二〇〇八年、大学三年生、二十歳のとき、後部座席に乗っていたところを交通事故に遭いました。信号交差点の矢印信号で右折中に、信号無視で直進してきた相手方が、佐藤さんの乗っていた車の左後部に衝突、その衝撃で佐藤さんは車外へ投げ出されました。
 救急車で運ばれましたが、下顎等複数箇所を骨折、意識不明の重体。生死をさまよう状態が続きましたが、奇跡的に約百日後に目を覚ましました。ただ、後遺症はひどく、脳挫傷による体幹機能障害という身体不自由な想像を絶する苦しみに向き合うことを余儀なくされました。
 なりたい職業の夢を奪われ、自分一人では動けない重い障害が残る体になってしまったことに打ちひしがれながらも、家族や回りの助けを借りながら懸命にリハビリを続け、少しずつ前向きな自分自身を取り戻していったそうです。
 今では回りの支援員の助けを借りながら、地元で行政や警察関係の各種団体、学校等で自ら交通安全講演会を精力的にこなし、特に後部座席でのシートベルトの着用について、その重要性を訴え続けています。
 私も実際に佐藤さん、そして佐藤さんを支援する皆様にお会いし、お話を伺いました。後遺症からうまく言葉が発せられない、手足も自由にならない、そういった姿でありながら表舞台に立ち、自らの経験を直接伝えることで、自分みたいな人を一人でも出したくないという純粋かつひたむきな強い信念を感じました。
 後部座席のシートベルト着用は運転者のみならず、様々な機会を捉え、子供や運転をしない県民全体に広報、啓発をしていく必要があります。これから子供を産み育てる子育て世帯に対するチャイルドシート等の正しい装着を含めた後部座席の安全性確保の啓発もそうですが、特に子供は後部座席に乗るケースも多く、事故の当事者となる可能性が高いため、自分自身を守り、かつ将来のドライバーとしての責任を持ってもらうためにも、学校教育の場でさらに積極的に広報、啓発すべきと考えます。
 そこで、まずは、後部座席におけるシートベルトの着用促進に向けた県警察の取組状況について伺います。
 あわせて、交通死亡事故ゼロに向け、後部座席シートベルトの着用率向上に向けた取組を、県としても積極的に推進していく必要があると考えますが、現状を踏まえ、今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。
 以上、明快な御答弁を期待し、壇上からの質問を終わります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

令和4年目次へ >>