令和4年県民環境委員会 本文 2022-12-09

【小木曽史人委員】
 先日地元の日本語教室を訪問したが、講師一人に対してトルコ人やイラン人、ベトナム人などが8人ほどおり、在日歴も2か月から10年まで様々であった。日本語の習熟度に差があるにもかかわらず、同じ教材やテーブルで日本語の勉強をしている状態だった。責任者やボランティアスタッフと話をしたが、次の2点について課題であると言っていた。
 一つ目は、慢性的な人手不足である。ボランティア頼みの綱渡り運営を強いられており、善意によって運営が成り立っているのが現状である。増加傾向にある外国人に対して、今後この体制で受け入れられるのかと不安に感じていた。
 二つ目は、日本語の習熟度に応じた教育の難しさである。担い手不足にも関連するが、日本語教室には子供から大人までおり、在日歴の長短、多国籍といった条件に対して、習熟度に応じた学習をしたくても、非常に難しいということであった。
 そこで現在策定が進められている、次期多文化共生推進プランに盛り込む特に地域の日本語教育の取組の推進について質問する。
 まず小中高の子供は学校教育現場があるため、そこでの日本語学習が主となると考えられるが、子供と大人といった主体の違いをどのように意識して外国人に対する地域での日本語学習推進に取り組んでいるのか。

【多文化共生推進室長】
 外国人県民が日本語を学習する環境として、学校教育現場と地域の日本語教室があり、自治体、NPOなど様々な主体が運営している地域の日本語教室は、大人向けや子供向けなど、その対象も様々である。
 学校教育現場では、児童生徒に対して学校生活や教科学習のための日本語を教えるが、地域の日本語教室では、児童生徒の日本語学習を補完したり学校に通っていない子供の就学を促進する役割を担っている。そして、地域の日本語教室の活動については、公益財団法人愛知県国際交流協会に設置した日本語学習支援基金に本県も拠出し支援を行っている。
 また、大人の外国人を対象とした日本語教育では、人によって日本語の習熟度の差が大きく、ほとんど日本語が話せない人を対象とした初期日本語教育では、指導者は一定の専門知識が必要になると考えている。

【小木曽史人委員】
 子供たちは学校において日本語教育を充実させることができるが、大人にはそうした場がない。そのためコミュニケーション支援という観点では、地域の日本語教室が担う役割は大きいと考える。
 来日したばかりの外国人は、ほとんど日本語が話せない。そのためコミュニケーションツールとして基本的な日常会話程度の日本語を習得できる環境を整えるには、場所と指導を行う人材の両方が必要である。本県は、初期日本語教育に取り組む市町村を支援していると認識しているが、実際にどのような支援を行ってきたのか。また、支援の結果、市町村における初期日本語教育はどういう状況なのか。

【多文化共生推進室長】
 初期日本語教育は、生活に必要な日本語を身につけることを目的としているため、行政が主体となって取り組むこととしている。本県では、市町村が主体となった初期日本語教育の体制づくりを推進するため、2018年度から毎年1市町村を対象として指導者養成や教室の開催を行うモデル事業を実施してきた。本年度は尾張旭市で、指導者養成講座と外国人県民が参加する初期日本語教室の運営を実践するモデル事業を実施し、指導者養成講座には30人が参加した。
 また、これまでモデル事業を実施した4市のうち3市において、初期日本語教室が継続している。

【小木曽史人委員】
 モデル事業を実施した4市のうち1市以外はモデル事業後もうまく継続して初期日本語教室を運営しているとのことだが、次期多文化共生推進プランでは、初期日本語教育に取り組む市町村数を現在実施している8市町村から20市町村に増やすという目標を掲げているが、どういった計画で増加させるのか。

【多文化共生推進室長】
 外国人県民の増加に伴い初期日本語教育のモデル事業の実施を希望する市町村は増えていることから、今後初期日本語教育の取組がさらに進むよう、支援の対象となる市町村の拡充を検討している。
 また、モデル事業終了後も市町村において初期日本語教育を継続できるよう、愛知県地域日本語教育推進補助金や、県が委託している地域日本語教育コーディネーターによる指導、助言等の支援を行っていく。

【小木曽史人委員】
 外国人県民は増加傾向であり、20市町村という目標達成に向け、手を挙げた市町村はもちろんのこと、増加が顕著な市町村には県が積極的に初期日本語教育事業の実施を働きかけて、全市町村で実施できるよう取り組んでほしい。
 ただし、市町村がこうした事業を実施するには、それを支える担い手不足の問題がある。特に初期日本語教育においては一定の専門性を持った指導者の確保が不可欠だと感じている。
 そして、次期多文化共生推進プランでは、初期日本語教育指導者養成講座の修了者数について評価指標が出されており、現状の88人を2027年までの5年間で300人にするとしている。初期日本語教育指導者養成講座を受講する人を増やすことが大事であるが、講座の修了者が実際に初期日本語教室で継続して活躍することも重要である。
 そこで、現在、講座を受講した88人は、実際に今でも市町村の初期日本語教室で活躍しているのか。

【多文化共生推進室長】
 これまで県のモデル事業で養成した指導者は、引き続き地域で活躍している。例えば、昨年度モデル事業を実施した岩倉市では21人の指導者を養成し、このうち15人が本年6月から開始した岩倉市の日本語教室に参加していると聞く。
 また、本年度モデル事業を実践している尾張旭市において、来年度以降も教室を継続するための準備が進められており、養成講座の参加者に今後の意向を確認したところ、19人が尾張旭市が行う今後の日本語教室に参加したいとのことであった。

【小木曽史人委員】
 受講者の多くが実際に活躍していることは理解したが、ICTを利活用するなど効果的な指導方法が今後出てくると予想されるので、受講後も参加しない人への働きかけなども含めてフォローアップの視点も忘れずに実施してほしい。
 最後に、初期日本語教室で日本語を学んだ後に、外国人の居場所でもある別の地域の日本語教室に通い、さらに学習を続けるといった日本語習熟度に応じた段階的な仕組みが確立できると考えている。次期多文化共生推進プランでは、日本語能力判定ツールの開発を施策として掲げているが、国は既に評価ツールを公表している。県が改めて開発する狙いは何か。

【多文化共生推進室長】
 現在、国は留学生や就労者を含めた多様な日本語学習者に対する日本語能力の評価について、6段階のレベルを示す日本語教育の参照枠という共通の枠組みを作成している。評価ツールとしては、学習者自身が自己評価できるものを作成しているが、指導する側が客観的に能力判定を行うものにはなっておらず、レベルに応じた支援につながりにくいといった課題がある。
 そこで、次期多文化共生推進プランでは、教室運営者が現場で活用できる日本語能力判定ツールを開発することとしている。この判定ツールの活用により、外国人県民が地域の日本語教室に参加する際に、ほとんど日本語が話せない学習者を市町村が運営する初期日本語教室に案内することや、地域の日本語教室のクラス編成や指導者の人数に反映させ、学習者の日本語習得のレベルやニーズに合った支援を行うことができるなど、円滑な教室運営が期待される。
 こうした取組を通じて、日本語学習を希望する全ての外国人県民に対して適切な学習機会を提供する体制づくりを推進していく。

【小木曽史人委員】
 初期日本語教室の展開に本県が主体的に取り組んでいく姿勢を理解した。
 ただし、初期日本語教室を市町村で実施しようとすると、不足している日本語指導者のマンパワーも傾注することになる。そうすると、初期日本語教室の対象とならない外国人の居場所を逆に奪ってしまうことが危惧される。
 しかし、日本語の習熟度に応じた段階的な仕組みは必要だと考えている。今後その取組を実施する市町村を県が後押しするのであれば、継続的に仕組みが機能していくための人材確保も念頭に入れ、例えば大学の国際学部や文学部で意欲のある学生に声をかけて人材バンクに登録してもらい、人手不足の地域に派遣するなど、少しでも事業が円滑、前向きに進んでいくよう取り組んでほしい。

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