令和5年2月定例会(第5号) 本文 2023-03-07


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◯一番(小木曽史人君)
 私からは、歳出第四款福祉医療費第一項福祉総務費のうち、生活困窮者対策事業費の自立支援事業費について、コロナ禍という大きな変化を経て浮き彫りとなった課題、これから事業を実施する上で留意する点を中心にお伺いをしていきたいと思います。
 三年間のコロナ禍を経て、五月八日以降は感染症法上の位置づけを五類とする国の方針が明確になって、コロナ禍前の日常を取り戻す明るい兆しを感じる反面、徐々に新型コロナウイルス感染症対策と銘打ったセーフティネットが解除される懸念もあり、そういった意味では、生活困窮者自立支援事業はまさにこれからが正念場を迎えるとも言えるのではないでしょうか。
 そもそも本事業は、御存じのとおり、生活保護を受給している世帯の四人に一人が生活保護受給世帯出身という、いわゆる貧困の連鎖、ひきこもりの増加や懸念される八〇五〇問題を背景に、その負の連鎖を断ち切るのに併せ、生活保護の状態に至る前の段階で自立的に生活を立て直すようサポートすることを目的としております。
 愛知県としても、コロナ禍前から国の支援メニューに沿って、経済的支援もさることながら、個別の自立相談支援を中心に、就労支援、家計再建支援、子供支援などの生活再建サポートを、地域の関係機関やほかの制度による支援との連携を取りつつ推進してきていると認識をしております。
 私はこれまでも度々議会の場でこの問題を取り上げ、例えば、福祉事務所を設置していない町村部の自立相談支援は県が包括的な窓口を担っており、特に海部福祉相談センター管内では生活保護受給者が高止まっている一方、自立支援事業としての新規相談件数は低水準であり、仕組みがうまく機能していないのではないか、さらなる生活困窮者の掘り起こしと実効的な支援の在り方を検討すべきではないかという問題提起をしてまいりました。
 そんな中でのコロナショック。例えば飲食業をはじめとする人との接触が不可欠なサービス業の多くが廃業や休業、事業縮小に追い込まれ、結果、多くの人が雇い止めや離職を余儀なくされました。
 それに対し、国は緊急対策として、一律十万円の特別定額給付金の支給、雇用調整助成金の拡充など特別な経済的支援のほか、生活困窮者対策として、いわゆる生活福祉資金貸付け、住居確保給付金という現金給付制度の要件を緩和して対応。以降、コロナ禍の状況に合わせて都度延長され、加えて、新たな制度として新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金の交付といった支援がなされ、現在に至るわけです。
 ここで、生活困窮者対策としての経済的支援について、愛知県での実績データを御紹介します。
 まず、生活福祉資金の特例貸付けの決定件数です。コロナ禍前の令和元年は年間七百九十二件、要件緩和で令和二年は八万四千六十七件、令和三年は六万三千二十四件と激増し、直近の昨年、令和四年でも一万二千二百九十二件と、コロナ禍前と比べて約十五倍に上っています。
 また、長期化するコロナ禍の影響を補完する形で、令和三年七月から支給申請が開始された、先ほど申し上げましたが、新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金の支給決定件数はといえば、本年一月末時点で初回支給と再支給を合わせて一万千六百二十九件にも上っております。
 生活福祉資金の特例貸付けの受付は昨年九月末で終了。実際のお金の貸付けは十二月分まで。そして、生活困窮者自立支援金の支給が、再支給も含めて、受付は昨年十二月末で終了。実際のお金の支給は今月までという制度になっています。
 つまり、来月に迫った二〇二三年度からは、こうした手厚い経済的支援がなくなるわけです。就労して自立した生活を送るにはまだまだ時間がかかる生活困窮者が多数取り残されることは容易に想像できますし、先ほど申し上げたコロナ禍前後でさほど変わらない生活保護受給者数がこれから増加していく可能性も否定できません。
 しかしながら、こうも考えられます。これまで地域社会からの孤立に伴う情報遮断や行政機関に相談するという心理的な抵抗感で相談に行けなかった潜在化していた生活困窮者が、先ほど来、るる述べてきた国のコロナ対策としての経済的支援が呼び水となり、皮肉にも浮き彫りになった、これまで把握しにくく掘り起こしが困難だった生活困窮者が可視化されたわけです。
 こう考えてみると、来年度の生活困窮者の自立支援事業は一つの大きな節目とも言えるタイミングを迎えるとも言えます。
 コロナ禍前、コロナ禍、そして、今現在の可視化されたこの状況を冷静に分析、認識しつつ、これまでの支援の実態を把握し、これからの迅速かつ的確な実効的支援につなげるよう取り組んでいかなくてはなりません。
 そこでお伺いをいたします。
 これまで申し上げてきた現状を踏まえ、来年度以降、県として、生活困窮者自立支援にどう向き合い取り組んでいくのかお聞かせください。
 そして、可視化された生活困窮者を自立支援につなげるために重要な役割を担うと思われるのがアウトリーチ支援員です。
 アウトリーチ支援員は、地域に潜在している生活困窮者、関係機関から情報提供のあった支援対象者に積極的にアプローチすることで、当事者が抱える生活再建の課題を見える化し、適切な自立支援制度、他機関、他制度につなぐことを目的として配置されております。
 福祉事務所を持たない町村部の県所管福祉センターにも令和二年度以降配置されておりますが、ちょうどコロナ禍直後からの配置で、訪問、面着での聞き取りや同行支援など、丁寧な支援の実施が困難であったのではないかと推察できます。
 ただ、来年度以降は、せっかく可視化された生活困窮者を一人でも多く拾い上げ、具体的なアプローチの下で実効的な支援につなげる取組がこのアウトリーチ支援員に期待されると考えます。
 そこでお伺いをいたします。
 コロナ禍で、アウトリーチ支援員はどういった活動を実施して生活困窮者を把握し救済に導いてきたのか。現状分析とその評価、課題認識も踏まえつつ、来年度の取組の方向性についてお聞かせください。
 以上です。

◯福祉局長(橋本礼子君)
 生活困窮者の自立支援についてお答えします。
 コロナ禍における各種の生活支援策が実施される中、例えば収入の減少や失業等により生活困窮となった世帯を対象といたします生活福祉資金の特例貸付けは、県内で九万二千世帯を超える利用がございました。
 こうした方の中には、生活が苦しいものの、これまで行政の支援を受けることのなかった方も相当数あり、貸付けを契機に行政の支援窓口につながったということにもなります。
 既に生活の立て直しの方向に向かった方もおられますが、立て直し途上にある方々に対しましては、自立相談支援機関を御案内し、必要な支援を必要な方に確実にお届けできるよう、継続的な支援を実施したいと考えております。
 次に、アウトリーチ支援員についてであります。
 県では、町村部を対象といたしまして、生活にお困りで支援を必要とする方を自ら出向いて掘り起こし、自立相談支援機関につなぐアウトリーチ支援員を福祉相談センターに配置しております。  事業開始いたしました二〇二〇年度は、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、アウトリーチ支援員が把握した生活にお困りの方は延べ二百八十二人にとどまりましたが、翌二〇二一年度は延べ八百四十八人に増加しております。
 この中には、長年ひきこもり生活をしていた方で、他機関からの情報提供を受け、アウトリーチ支援員が関わることによりまして、面談を通じて信頼関係を構築し、医療機関への受診や障害福祉サービスの利用につながったというケースもあり、一定の効果を上げているものと認識しております。
 一方で、御本人からの支援要請がない状態で接触を開始することになりますので、信頼関係が構築されるまでに時間がかかるなど、課題があると感じております。
 県といたしましては、引き続き市町村や支援団体等、関係機関との連携強化に取り組むとともに、アウトリーチ支援員を来年度一名増員いたしまして体制を強化することで、自ら相談窓口に来られない生活にお困りの方が必要な支援を受けられるよう環境整備を進めてまいりたいと考えております。

◯一番(小木曽史人君)
 御答弁ありがとうございました。
 では、要望をして質問を閉じたいと思います。
 アウトリーチ支援員を来年度一名増員して体制を強化するとの御答弁でしたが、これは恐らく、本年度までは尾張福祉相談センターと海部福祉相談センターの兼任一名を来年度からそれぞれ各センターに一名専任で配置するということで理解をしております。
 可視化された生活困窮者を再び埋もれさせないよう、しっかりとサポートして引き揚げ、現実的な自立に結びつけていただくよう期待したいと思います。
 ただ、例えば地元の海部福祉相談センターは津島市にあり、所管する蟹江町、大治町、飛島村の各町村まではいずれも片道三十分ほどかかることから、そこに配置されたアウトリーチ支援員では対応できる件数が限られてしまい、より身近なところからの継続的な支援が実施できるのか。先ほどおっしゃられた信頼関係の醸成に時間がかかるといった課題に対して、いわゆるこの物理的な距離感が起因しているのではないかということもあったように思われます。
 また、自立支援事業メニューの中に就労準備支援事業、これは、ひきこもりや八〇五〇問題が懸念される今は、すぐに就労とまではいかない方に社会に慣れてもらうためのサポートをするという事業でございますけれども、そういった方たちの就労体験先の開拓とか実際の就労先とのマッチングについては、たとえ専任になってもアウトリーチ支援員単独で行うことは大変難しいのではないかと思います。
 まずは、地域の自治体や自立支援に関わる既存事業者としっかり連携を図りつつだとは思いますけれども、より効果的、効率的な支援という観点から、地域に根差した独自の情報ソースと構築した人間関係、関係機関とのパイプを持っている、例えば地域の就労準備支援事業を受託している事業者にアウトリーチ支援事業も一体として委託するなどの可能性も念頭に置きつつ、来年度事業を実施していただくことを要望し、質問を終わります。

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