令和6年警察委員会 本文 2024-06-26
【小木曽史人委員】
私からは、貨物集配中の車両に対する駐車規制と駐車許可申請について伺う。
まず、質問の趣旨を明確にしてから順次個別の質問に入りたいと思う。
道路における車両の駐車は、交通事故や交通渋滞の発生、緊急車両の通行に支障を来し、県民の安全・安心な生活環境を害する可能性があるため、その規制は必要不可欠な有効手段であると認識している。これが大原則である。一方で、その駐車規制は、物流を含めた私たちの生活の利便性に大きな影響を及ぼすことから、時の社会情勢に沿った必要最低限なものでなくてはならないとも思っている。
近年の物流状況は、コロナ禍が拍車をかけたネット通販の普及、市場規模の拡大により、宅配貨物が増加していることは知ってのとおりだと思う。国交省の調べによると、宅配便取扱個数は10年前の2014年度は約37億個、2022年度は約50億個と加速度的に増え続けている。
加えて2024年問題、いわゆる物流ドライバーの時間外労働の上限規制、配送費用も十分な価格転嫁ができない中でのドライバーの人材確保が困難になっており、物が十分に運べなくなる可能性が懸念されている。
そういった中、貨物集配業者は業務の性質上、短時間の公道における駐車が不可避であり、用務先周辺に駐車場所がなく、遠くに駐車することで、配達効率が著しく低下するなど大変厳しい環境に直面している。マンションなどの共同住宅やビルなど道路外の駐車場整備、マンション内の駐車場所の確保は進んでいるものの、道路における特に貨物集配業者の駐車の在り方については、冒頭言った規制の必要性とのバランスの中で、いま一度検討する必要があると考えている。
そこで、まずは貨物集配中の車両を含めた、一般的な駐車違反の道路交通法上の考え方を伺う。あわせて、駐車違反件数の推移及び近年の貨物集配数の増加に伴う貨物集配中車両の違反件数の推移がどうなっているのか伺う。
【交通指導課長】
初めに、駐車違反の道路交通法上の考え方について答弁する。
道路交通法において、駐車とは5分を超えない貨物の積み下ろしのための停止と、人の乗降のための停止を除いて、車両等が継続的に停止すること、または運転者が離れて直ちに運転することができない状態にあることを定義としている。
貨物集配中の車両が5分を超える貨物の積み下ろしや、5分以内であっても集荷や配達で運転者が車両を離れて直ちに運転できない状態で駐車禁止場所に駐車しているときは、駐車違反に該当する。
次に、駐車違反の取締件数の推移と貨物集配中の車両の駐車違反取締件数の推移について答弁する。
過去5年間の県内における放置車両確認標章の取付件数は、警視庁の統計では、令和元年中は10万6,143件、令和2年中は8万3,812件、令和3年中は7万5,145件、令和4年中は6万7,554件、令和5年中は6万4,090件となっており、年々減少している。
また、貨物集配中の車両の駐車違反に関する統計はないが、事業者用貨物自動車の放置車両確認標章の取付件数は、令和元年中は1,253件、令和2年中は1,208件、令和3年中は1,346件、令和4年中は1,334件、令和5年中は1,471件で推移している。
なお、先ほどの放置車両確認標章の取付件数の統計は警察庁の統計データになるので訂正させてもらう。
【小木曽史人委員】
貨物集配中であっても一般車でも同じ定義であり、ワンオペで運転していて、路上に駐車してマンションなどに入っていく場合、車両を離れた時点で、駐車違反になるという定義なのであろうと思う。
あわせて、先ほどのいわゆる駐禁切符、放置車両確認標章の取付の件数については、令和元年から令和5年にかけて、全車両、警察庁の統計であるが、4万件減っている。40パーセント減っている。その反面、事業用貨物自動車については18パーセント増加している統計なのであろうと思う。
要因としては、恐らく全件数が減ったのは、コロナ禍において外出規制等々があって、車の外出が減ったのであろうと思う。取締りに手心を加えたということはあり得ないと思っているので、恐らくそういうことなのであろう。半面、事業用貨物については、コロナ禍であってもエッセンシャルワーカーとして、ネット通販も増えたことで荷物が増えた反面、違反件数が増えているという統計なのであろうと想像している。
こういった課題に対して、その解決を図る方策として駐車規制の見直しというのがあると思う。2018年2月に警察庁から、貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直しの推進についてという通達が各都道府県に出されて、昨年2月にも同様の趣旨で継続的な取組を推進するよう再度通達が出され、全国的に取組が進められていると認識している。
この駐車規制の見直しは、いわゆる貨物車両が路上駐車できるように、規制の在り方自体を見直していくもので、駐車禁止の規制から貨物を除外する、駐車可の規制にする、パーキングメーターを設置することが考えられると聞いているが、その件について一つ伺う。
2018年2月の通達と2023年の通達を受けて、愛知県警察としては、それをどう受け止めて、どのように取り組んだのか、具体的な実施内容と課題認識を伺う。また、貨物集配中の車両に係る駐車規制の見直しについて、今後どのように取り組んでいくのか伺う。
【交通規制課長】
県警察では、従前から駐車禁止規制からの貨物自動車の除外、貨物自動車専用のパーキングメーターの設置等の対策を講じてきた。
また、2018年の警察庁通達を受け、貨物自動車を対象とする駐車可規制を名古屋市中区等において計5か所、距離にして573メートルを新たに設置するなど駐車場所の確保に努めてきたところであるが、近年、貨物集配中の駐車需要の増加はますます高まっていると認識している。
今後も警察庁通達の内容を踏まえ、交通の円滑と地域の要望との均衡を図りながら、貨物集配中の車両に係る路上駐車需要が高いと認められる市街地等において重点的に駐車規制の見直しを進めていく。
【小木曽史人委員】
続いて、駐車許可申請について伺う。
駐車許可申請とは、道路交通法第45条第1項に基づき、やむを得ない場合に限り、車両情報、駐車期間、駐車場所を限定し、管轄の警察署長が許可を行うものと認識している。
貨物集配中の車両も事前に申請することで駐車可能となり、県警察ホームページ上でも物流関係記載例が掲載されているのを確認している。期間は最長6か月、1か所ずつではなく、ある程度の範囲のルートと駐車位置を図示した上で許可されることも事前のヒアリング等で確認している。いわゆるバス停方式と言われているようである。
貨物集配中の車両は大体の集配ルートが決まっているため、駐車禁止を回避して業務を安全に遂行できるため非常に有用な手段であり、物流業者も活用していると聞いている。
ただし、ある物流関係者に聞くと、例えば名古屋市のある区では許可されるものが、別の区では全く許可されないなど、警察署ごとの運用に温度差があるので大変困っているという状況も聞いた。
そこで、特にオフィスやマンション等集合住宅が多い名古屋市の各区の、さきに言ったバス停方式での駐車許可申請の受付実態はどうなっているのか伺う。また、警察署によって申請の受付自体に差異はないのか、県内警察署における駐車許可申請の受付実態について調査を実施しているのか伺う。
【交通規制課長】
警察署長権限による駐車許可について、申請件数は把握していない。駐車許可件数については、令和5年中、バス停方式による駐車許可をした警察署が6警察署あり、件数の多い順に、千種警察署203件、中村警察署168件、東警察署151件、中警察署145件、西警察署84件、瑞穂警察署6件であった。
県警察では、警察署長の駐車許可について、警察署によって差異が生じないよう、その申請に係る必要書類や許可の基準の取扱要領等を各警察署に示している。引き続き県内統一的な運用が図られるよう、各警察署に対して指導していく。
【小木曽史人委員】
例えば私が聞いたのは北警察署ではなかなか認められないが、ほかの中村警察署、東警察署、中警察署、西警察署では積極的に認められる現状があるという話があった。当然、その地域の実情にもよるとは思っているが、そういう受付ができることを周知してもらえればと思う。
この駐車許可は、車両ごとに申請が必要であって、バス停方式での申請が可能ではあるが、事業者の事務負担、手続コストは非常に大きいと思う。
そこで、この駐車許可申請の手続の課題をどのように認識をしているのか、例えば手続をもっと簡素化すること、貨物集配中の車両などの反復継続的な用務については許可有効期間を延長すること、デジタル化で手続を簡素化することも考えられると思うが、その検討状況について伺う。
【交通規制課長】
県警察では、駐車許可申請に関して、小木曽史人委員が示したとおり、許可有効期間の延長やデジタル化による手続の負担軽減を求める声があることは承知している。
現在、県警察では、警察署長による駐車許可について、定型的で反復継続する申請に限りオンライン申請を受け付けており、貨物積み下ろしの許可期間は最長6か月間としているが、本年6月21日に閣議決定した規制改革実施計画において、駐車許可手続のデジタル化、必要書類の全国統一化、許可有効期間の延長など、手続を簡素化する内容が盛り込まれたものと承知している。
今後は、この規制改革実施計画に基づき、警察庁から都道府県警察への具体的な指示がなされるものと承知しているので、その指示を踏まえ、今後の対応を適切に検討していく。
【小木曽史人委員】
最後の質問である。
規制改革実施計画においても貨物集配中の車両の駐車許可申請の要件や手続を簡素化していく方向性が示されているが、どんどん簡素化していくと、その車両や事業者に対する包括的な駐車禁止区域での駐車許可という議論に行き着くとも考えられる。
前段で言った駐車規制の見直しと併せて、この包括的な駐車禁止区域での駐車許可についてどのように考えているのか、課題を含めて伺う。
【交通規制課長】
県警察では、警察庁の基本方針に基づき、緊急自動車や道路維持作業車などの公益性が高く、緊急に広域かつ不特定な場所に対応することが必要な用務に使用中の車両等に限って、公安委員会規則により駐車規制から除外している。
しかし、貨物集配中の車両は、駐車する時間や場所が一定程度特定されており、駐車禁止規制から除外するほどの緊急性も認められないことから、個別に駐車許可することで対応している。
県警察としては、駐車場所の確保には様々な課題があることを承知していることから、引き続き物流に配慮した駐車規制の見直しや駐車許可の運用に努めていく。
【小木曽史人委員】
最後に要望する。
駐車規制については、宅配便個数が今後も増加する見通しの中、都心のオフィス街などでは貨物自動車を対象とした法定の禁止を打ち消して区画線を配置する駐車可の規制が進んでいるものの、大型マンション等が立地する都心周辺の住宅街における駐車規制の見直しはあまり進んでいないように感じる。
昨年の警察庁通達を受け、運送業界に調査を実施したとも聞いている。そうした業界の意見も踏まえながら、もちろん大前提となる県民の安全性をしっかり確認しつつ、社会状況に適切に対応した形で貨物自動車を除外した駐車禁止規制を増やしていくなどの駐車規制の見直しを実施していくことを要望する。
駐車許可申請については、運送業者も手続コストをかけながら、何とかドライバーの心身の負担軽減と安全、安心かつ適正な道路利用の双方に心を砕いている実情にしっかりと向き合ってもらいたいと思う。
まずは今現在、私が耳にしている警察署ごとの駐車許可申請の受付に温度差がある実態をぜひ把握してもらい、その解消のため、いま一度警察署における円滑かつ適正な受付を指導してもらうことを要望する。
さらに、先ほど答弁のあった定型的で反復継続的な用務についてのオンライン申請が可能だということについては、周知不足なのか、あまり活用が進んでいないことも聞いている。物流業界等を通じて再度周知を徹底するなど、方策を進めてもらうよう要望する。